院長コラム

「乳がん患者は大豆製品を避けるべき?」エクオールと乳がんの関係

2026.05.01
ヘバーデン結節とブシャール結節
整形外科の疾患

当院では、ヘバーデン結節の治療に、大豆由来成分であるエクオールを活用しています。エクオールは女性ホルモン(エストロゲン)に似た作用を持つため、更年期症状の緩和にも用いられています。しかし一方で、「乳がん患者は大豆製品を控えるべきではないか」という不安の声を耳にすることがあります。実際、私の妻の友人も乳がん治療の際、担当医から大豆製品を控えるよう指導されたと話していました。

では、大豆製品やエクオールは本当に乳がんに悪影響を及ぼすのでしょうか。最新の研究を踏まえて解説します。


 

大豆製品で乳がんが悪化する科学的根拠はない

 

まず結論として、大豆製品やエクオールが乳がんを悪化させるという科学的根拠はありません。むしろ、疫学研究では大豆食品の摂取量が多い人ほど乳がん発症リスクが低いという関連が報告されています。

日本を含むアジア諸国では伝統的に大豆摂取量が多く、欧米に比べ乳がん発症率が低いことが知られています。大規模研究(JPHC研究など)でも、大豆イソフラボン摂取量が多い女性は乳がんリスクが低い傾向が示されています。また、エクオールを体内で作れる「エクオール産生者」は、乳がんリスクが低いという報告もあります。さらに、動物実験や細胞実験でも、現時点では乳がんへの悪影響を示す証拠はなく、さらなる研究が待たれる段階です。

 

乳がん治療中・既往歴がある場合はどうか

 

乳がんの60〜70%はエストロゲン受容体陽性(ER陽性)で、女性ホルモンの影響を受けやすいタイプです。そのため「エストロゲン様作用を持つエクオールは危険では?」と心配されがちです。

しかし、最新の臨床研究では次のような結果が示されています。

●大豆食品の摂取で乳がん再発リスクが上昇したという証拠はない
●むしろ「再発リスクが低下した」「乳がん死亡率が低下した」との報告が複数ある
●タモキシフェン治療中でも大豆摂取は問題ない
●アメリカがん協会(ACS)も「大豆食品の摂取は乳がん再発リスクに悪影響を与えない」と明記

 

これらの結果から、乳がん治療中・治療後であっても、大豆食品の摂取は基本的に安全と考えられています。

 

エクオールのサプリメントの安全性は?

 

大豆食品の安全性は比較的確立していますが、エクオールのサプリメントに関しては、まだ十分なエビデンスが揃っているとはいえません。ただし、エクオールの作用は本来のホルモンに比べて非常に穏やかであり、「乳がん既往があるから絶対に避けるべき」というものではありません。

 

ヘバーデン結節の治療において、エクオールは有効な選択肢の一つです。乳がんの既往がある方でも、エクオール治療を一律に諦める必要はありません。サプリメントの使用を検討する際は、主治医と相談しながら慎重に判断することが大切です。

 

不安のある方は、当院にご相談ください。あなたの病歴や体質に合わせて、最適な治療方針を一緒に考えていきます。