院長コラム

梅雨や夏に気をつけたい、痛風と偽痛風

2023.05.22
整形外科の疾患

もうすぐ6月、ジメジメとした季節になりますね。
今回は、梅雨から夏に増える病気、「痛風」と「偽痛風」についてお話しします。

痛風については、以前、コラムでもお話ししました。
痛風は足の親指の付け根が腫れて痛くなる病気で、圧倒的に男性に多く発症します。
血液中の尿酸値が上昇することで生じる尿酸の結晶が原因で、血流の悪い下肢の関節に付着することで炎症を起こします。


では、なぜ梅雨に発症しやすいのでしょうか? それは尿酸値の上昇に関係しています。
暑い梅雨や夏は、汗をかくことで水分不足になり尿酸の濃度が上がります。
体内の水分が減るとオシッコの量も減るため、尿酸が排泄されずに蓄積されやすくなります。また、プリン体を多く含むビールなどを飲む機会が増えることも一因です。
プリン体はビール以外にもいろいろな食品に含まれていて、特にレバー類や白子、エビやカツオなどの魚介類に多いことが知られています。
プリン体は肝臓で分解されて尿酸に変わります。通常は尿によって排出されますが、プリン体を過剰に摂取すると体内に蓄積し、痛風の発症につながります。

痛風で来院する患者様は、足の強烈な痛みに耐えられず受診にこられます。
初めて痛風が発症した患者様は、何科にかかれば良いのかわからないそうです。
これは提案に過ぎませんが、健康診断などで尿酸値の数値が高い、尿酸値が7mg/dLを超えている場合は整形外科へ。痛風以外の病気かもしれないと心当たりのある方は内科へ相談してみるのがよいのではと思います。

炎症は一過性で、治療をすれば痛みは軽快します。
しかし、痛みがなくなったからといって安心できないのも痛風です。
患者様の中には「痛みがなくなったから治った」「もう病院へ行かなくても良い」と誤った自己診断をする方がいらっしゃいます。これは、大変危険な行為なのでやめてください。
痛みがなくなったらとはいえ、尿酸値の数値はどうでしょうか?高いまま放置すると命に関わる合併症を引き起こすリスクになります。
高尿酸血症が引き起こす病気は,尿酸の結晶が沈着して起こるものばかりではなく、動脈硬化を促すことで、心筋梗塞や脳梗塞になったり、腎機能が障害されて透析が必要になる場合もあります。

痛風は、はじめは自覚症状がないのが特徴です。
症状がなくても、尿酸値を見れば病気が進行しているかどうか分かるので、ご自身で数値に意識を持って生活習慣などに気をつけていただければと思います。

痛風で、定期的な通院が必要となった場合は、お薬でのコントロールや食生活のポイント、飲酒の量、運動などをお伝えしたいと思います。


さて、ここまでは痛風の話。これに似た病気に、「つうふう」があります。
痛風が活動量の多い40~60歳くらいの男性に多いのに対して、偽痛風はもう少し高齢の70歳以降に多く男女差はありません。

偽痛風は、ピロリン酸カルシウムという石灰分が関節軟骨に沈着することで発症する関節炎の総称です。
膝関節に多く、他に肩関節、足関節、手関節にも見られます。
痛風と同様に関節が突然腫れて強い痛みを伴いますが、偽痛風には高尿酸血症が見られません。症状は似ていますが原因が異なるので、このような病名が付いています。
偽痛風は、レントゲンや採血の検査で鑑別できます。治療としては次のものがあります。

関節液の排出とコルチコステロイドの注射
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID) の服用
患部冷却


痛風も偽痛風も早期に受診することが重要です。
突然の関節の痛みを感じたら放置せずに、まずはご相談ください。