院長コラム

走りすぎで起こる、すねの内側の痛み
スポーツ障害「シンスプリント」

2023.08.14
整形外科の疾患

夏休み真っ只中、中学校や高校では部活動の合宿などで激しい運動をする機会も多いと思います。スポーツによる疲労やけがには十分に気をつけたいですね。
今回お話しするのは、過度な運動で起こりやすい「シンスプリント」についてです。

シンスプリントとは?
聞き慣れない言葉ですが、「shin」は英語で「すね」のこと。
シンスプリントとは、オーバーユース(使いすぎ)が原因で、脛骨けいこつの骨膜に炎症が起こるスポーツ障害です。別名で、脛骨過労性骨膜炎けいこつかろうせいこつまくえんとも言います。
その名の通り、陸上のトラック競技やサッカー、バスケットボールなど、走ることの多い競技の選手に多く見られます。
症状は、運動時や運動後に下腿(すね)の内側に縦に長い範囲でズキズキと痛みが生じます。

痛みのレベルは次の4段階に分類されます。
GradeⅠ 運動時のみ痛みがある。
GradeⅡ 運動前後に疼痛があるがスポーツ活動に支障はない。
GradeⅢ 運動前中後に疼痛がありスポーツ活動に支障をきたす。
GradeⅣ 疼痛が強くスポーツ活動は不可能。


原因
痛みのメカニズムとしては、ランニングなどにより足首を下に曲げる動作が繰り返されることで、脛骨けいこつの骨膜に炎症が起きます。

足への負担の要因として、次のようなものがあります。
●運動量や質の急激な変化
シンスプリントは「初心者病」と呼ばれることもあり、スポーツを始めたばかりの中学生や高校生に多く見られます。
●扁平足(土踏まずがない)や回内足(かかとの向きが内側に向いている)
これらの人はランニングなどでの着地時に衝撃が直接足に伝わるため、負担がかかりやすくなります。
●練習環境や靴
固いグラウンドでの練習やクッション性の低い靴の使用は足への負担につながります。


治療・予防
スポーツによる過労性障害のため、保存治療が基本です。炎症の緩和には、アイシングや外用薬を使用します。
常に痛みを感じる場合はしばらく運動を控えましょう。完治しないまま運動を再開すると再発し慢性化する可能性があります。
予防としては、ヒラメ筋(ふくらはぎ)のストレッチが効果的です。
アキレス腱を伸ばすような姿勢でヒラメ筋を伸ばしましょう。
膝を曲げるのが、少し難しい場合は壁に向かって両手を付き、ゆっくり膝を曲げるのも良いので、無理せずご自分のペースでストレッチしてください。
また、クッション性の高い靴を履くことや練習環境を見直すことなども大事です。スポーツをする際は、足に負担がかかりにくいように意識しましょう。


一点に強い痛みが続く場合は疲労骨折の可能性もあるので、痛みを自覚したら早めに整形外科の受診をおすすめします。

これから夏合宿という人もけがの予防や練習後のケアを心掛けて、安心してスポーツに取り組みたいですね。