院長コラム

子どもに多い、足の内側(土踏まず)の痛み

2023.08.25
整形外科の疾患

前回のコラムでは、走りすぎで起こるスポーツ障害「シンスプリント」についてご紹介しました。今回のテーマもスポーツ障害についてです。
当院には時々、「足の内側のでっぱりが痛い」と小学生や中学生が訪れます。内くるぶしの前方足側の骨を押さえて、強い痛みがあると言います。


これは「ゆうつうせいがいけいこつ障害」という疾患です。
外脛骨がいけいこつとは、足の内側のアーチの中央部にある過剰骨(余計な骨)で、約15%の人に見られます。女性に多く、80〜90%は両側性です。

多くの場合、スポーツ活動が盛んな10~15歳頃に発症します。
成長期に舟状骨しゅうじょうこつという足の内側の骨が形成される過程で、本来1つにくっつくはずの骨が分かれたままになることで、舟状骨の隣りに外脛骨ができます。この外脛骨ができること自体は問題ないのですが、一部の人には痛みが生じてしまいます。


症状・診断
運動を繰り返しているうちに痛みが強くなることが多いですが、急激な運動負荷や捻挫などの外傷がきっかけで発症することもあります。
痛みの原因は、オーバーユース(使いすぎ)により外脛骨が過剰な刺激を受け、外脛骨の周りに炎症が起きることにあります。
特に扁平足の人ほど有痛性外脛骨障害を発症しやすい傾向にあります。
その理由は、足の衝撃緩衝の役割を持つ土踏まずのアーチが低いことで、外脛骨への負担が大きくなるためです。
診断は、視診と触診で行い、足の舟状骨の変形を見るためにX線(レントゲン)を使います。
また、軟骨や靭帯の状態を確認するために、超音波やMRI検査をすることもあります。


治療・予防
骨成長が止まる15〜17歳頃に自然治癒することが多いですが、それまで痛みを我慢するのはつらいですよね。
先ほどもお話ししたように、スポーツなどでの急激な運動負荷が原因で痛みが生じることが多いので、数週間運動を控えることで痛みは軽減します。

痛みが治まれば運動を行っても構いませんが、しばらくすると再発することがあります。
再発の予防には、後脛骨筋こうけいこつきん(ふくらはぎの辺り)のストレッチや運動後のアイシング、マッサージ、足に合った靴の着用などが効果的です。
扁平足を合併している人の場合は、足底板(インソール)を使って、足の内側のアーチを保持することも有用です。本来あるべき位置にアーチを戻すことで外脛骨への負担が減り、歩行時の痛みが軽減します。
これらで痛みが治まらない場合は、次の治療を行います。


①保存的治療
痛みのある部位にステロイド剤を注射し、炎症を和らげます。また、後脛骨部への刺激を抑えるため、足底版(インソール)を使います。
②手術的治療
再発を繰り返して痛みが治まらない場合は、外脛骨と舟状骨を固定する骨接合術や外脛骨(余計な骨)を摘出する手術などを行います

痛みが治まるといっても、できれば手術は受けたくないですよね。
発症初期段階であれば保存的治療で治ることが多いので、症状に気付いたら早めに当院にご相談ください。