院長コラム

子どもに多い股関節の痛み
違う病気が隠れているかもしれません

2023.05.08
整形外科の疾患

成長期のお子様で、夕方~夜に足の痛みを訴えたり、痛みは時間が立つと治まったり、外観上の異常は見当たらないのに股関節の痛みを訴えたり、何が原因なのか分からずに心配な様子で来院する親御さんがいらっしゃいます。

これは、「単純性股関節炎たんじゅんせいまたかんせつえん」という3才から10才頃の子どもに多く起こる急性の疾患です。関節の中にある滑膜の炎症によって起こります。

原因はよくわかっていませんが、比較的、活動量の高い子どもに多く、遠足や運動会の練習などがきっかけで起こることもあります。
元気な子どもが急に痛がるので心配になりますが、一過性のものですので、安静や湿布でだいたい1、2週間で症状は軽快します。
痛がったりケロッとしたり、親子さんも「あれ?」っと思うかもしれませんが、仮病ではないので、痛いものだと理解してあげてください。痛がる場所を触ってあげるだけでも痛みが少し紛れることもありますので優しく寄り添ってあげてください。

稀に、症状が似ている病気で「化膿性股関節炎かのうせいまたかんせつえん」という病気があります。
乳幼児に多く、単純性股関節炎と同じように股関節に痛みが生ます。
具体的な症状は、
・長時間痛みを訴える
・痛む場所が毎回同じである
・痛みが日に日にひどくなる
・腫れや熱感がある
・足を引きずっている などです。
これはなんらかの原因で股関節に細菌が侵入して、炎症を起こしている状態です。
放置していると細菌が身体に回って敗血症になる恐れがあります。
治療が遅れると多臓器不全となり命にかかわる病気ですので早期に治療を行う必要があります。
治療は、股関節を切開して洗浄と排膿を行い、全身に抗生剤を投与します。
化膿性股関節炎かどうかは、発熱の有無や採血の検査で鑑別できます。
ケースとしては稀ですが、子どもが股関節を痛がる時は、一過性の関節炎と判断せずに当院までご相談ください。