院長コラム

肩・ひじ・ひざにできるコブ状の正体「滑液包炎かつえきほうえん」と「ガングリオン」の違いについて

2023.07.31
整形外科の疾患

梅雨が明けて、毎日うだるような暑さが続いています。
私が子供の頃はうちわや扇風機で夏の暑さをしのげましたが、以前に比べて長野市も猛暑日が多くなりました。
先日、60代の男性が、ひじにできたコブが気になると当院を受診しました。
ひじを動かすと少し痛みがあり、原因として思い当たることはないとのことでした。
以前、このコラムで手の甲や手首、足の甲にしこりができるガングリオンの話をしました。今回お話するのは、それに似た滑液包炎かつえきほうえんについてです。

滑液包炎かつえきほうえんとは?
滑液包とは、関節の周辺にある小さな袋のことで、中には粘り気のある液体が入っています。これは関節が滑らかに動くためのサポートとしてクッションの役割をしています。
運動などで特定の部位を繰り返し使用したり、ぶつけたりすることで炎症を起こし、余分な体液が溜まることがあります。
それがコブの正体、滑液包炎なのです。

滑液包炎が見られる部位
滑液包炎は次の部位に多く見られます。この中でも特に頻度が高いのは肩関節ですが、しこりのように表面には出てきません。
・肩関節
・ひじ(曲げたところの先端)
・ひざ(お皿の直上やお皿の少し下)
・足首(足首の外側)
診断は問診や触診、場合によって体液の採取などで行います。

原因・治療
滑液包炎には次の2種類があり、それぞれ原因や症状、治療法が異なります。
①一般的な滑液包炎
②化膿性滑液包炎
一般的な滑液包炎は、オーバーユースやけがで起こります。あまり痛みはなく、コブや腫れが気になって受診する方が多いです。
一方、化膿性滑液包炎は、黄色ブドウ球菌などのばい菌が原因で痛みが強く熱を持って赤く腫れます。
一般的な滑液包炎は、出血を伴った滑液の貯留があり、処置で滑液を穿刺してもまた再発して膨らんでしまうことが多いです(出血しているため)。しばらく時間をおいて(4週以上)穿刺するとほぼ再発せずに完治します。
化膿性滑液包炎は、抗生剤の内服や点滴で治療します。
ちなみにガングリオンとは内容物で区別でき、針で滑液包から体液を採取すると分かります(ガングリオンは内容物がゼリー状)。

先ほどの男性の場合は、よく話を聞いてみると、毎朝早く起きて薪割りをしていたそうで、ひじに負担がかかっていた可能性があります。
一般的な滑液包炎のため、しばらく腕を使う運動を控えてもらい経過を見ることにしました。
初めはしこりだけで痛みがなくても、放置しておくと悪化する恐れがあります。
しこりやコブが気になる方は、お早めに当院にご相談ください。