院長コラム

スポーツをする子どもに多い腰の痛み

2023.06.20
整形外科の疾患

当院には長野市内を中心に、子どもから高齢者までさまざまな年齢の方が受診に訪れます。その症状も多彩です。
先日は、地元の中学校に通う男子生徒が腰の痛みで来院しました。部活動でバスケットボールをしていて、練習中に腰が痛むとのことでした。
斜めからのレントゲン検査で腰椎の後方部分に分離が見られたことから、「ようついぶんしょう」と診断しました。

腰椎分離症の主な症状
● 腰、尻、太ももに痛みやしびれがある
● 体を反らせると痛い
● 前かがみに床に手をつけない

腰椎分離症とは?
腰椎分離症は、スポーツでのジャンプや腰をひねる動作で腰椎の後方部分にひび(亀裂)が入って起こる、いわゆる疲労骨折です。これは1度に起こるケガではなく、スポーツの練習などで繰り返し腰を反らせたりひねったりすることで起こります。
特に、野球やサッカー、バスケットボールなどの競技を日常的に行う10代前半の伸び盛りの青少年に多く見られます。子供に多く発症するのは、成長期の骨は柔らかく、運動などでの圧力でひびが入りやすいからです。
腰椎は第1腰椎から第5腰椎まで5つの椎骨で構成されていますが、特に一番下にある第5腰椎は圧力がかかりやすく、分離症はこの部分に好発します。

治療方法
原因が疲労骨折のため、骨の癒合を目指す保存治療が基本です。しばらくはスポーツを控え、コルセットを装着して安静にします。治療期間は骨の癒合具合によって変わりますが、概ね6カ月くらいです。

分離症があっても強い痛みや日常生活に支障なく生活できる場合が多いですが、放置して運動を続けていると、「分離すべり症」に進行していく恐れがあります。
これは骨折部が癒合せずに分離したまま、腰椎にずれが生じた状態です。腰痛が長引いたり、腰椎の中を通る神経が圧迫されて下肢の痛みやしびれが生じたりすることもあります。痛みが強く日常生活に支障が生じる場合は、神経の圧迫を除去する手術や固定術を検討します。
ちなみに、冒頭で紹介した男子中学生の場合は、痛みはそれほどひどくなく、腰椎のずれも生じていなかったため手術の必要はありませんでした。

予防法としては、トレーニングによる腹筋や背筋の強化や大腿部のストレッチなどが挙げられますが、すでに腰に痛みがある場合は、整形外科の早めの受診をおすすめします。
症状が悪化すると痛みが長引き、スポーツの復帰にも時間がかかります。しっかりと医師の診察を受けて、安心してスポーツを続けたいものですね。