院長コラム

スポーツ中に起こりやすい膝のけが 「膝蓋骨脱臼しつがいこつだっきゅう

2023.11.08
整形外科の疾患

長野市若穂地区にある当院から遠くの山を眺めると、すでに冠雪が見られます。
気がつけばもう11月、今年も残すところ2カ月を切りました。
運動をするには良い季節ですが、けがには気を付けたいものです。
今回はスポーツ損傷の一つである「膝蓋骨脱臼しつがいこつだっきゅう」について解説します。

膝蓋骨脱臼しつがいこつだっきゅうの症状と原因
膝蓋骨脱臼はスポーツ中にジャンプして着地した際によく起こるけがです。
足が地面に着いた瞬間に太ももの筋肉が収縮し、膝蓋骨(膝のお皿の骨)が外側にはずれることで、強い痛みや腫れが生じます。
場合によっては、脱臼時に膝蓋骨や大腿骨の関節面の一部が骨折することもあります。
また、関節の骨が部分的にずれている亜脱臼の状態では、歩行時に膝の内側が痛んだり、膝がガクッとしたりします。亜脱臼の場合は無症状のこともあります。


いずれの場合も自然に整復されることが多く、数週間もすれば歩けるようになりますが、治らない場合は整形外科での整復が必要です。
膝蓋骨脱臼の原因としては、生まれつき膝蓋骨しつがいこつ大腿骨だいたいこつの形状や位置に異常があるなどの素因を持っていることが多いです。こうした素因がなくても膝関節に強い力が加わることで脱臼する場合もあります。
例えば、サッカーやバスケットボール、体操などで急に膝の向きを変えたり膝をひねったり、無理な負荷がかかると膝蓋骨脱臼が起こります。
若い女性に好発するとされていて、このけがで当院を受診する患者さんも10代の女性が多いです。

診断
膝蓋骨脱臼は見た目にも明らかで視診や触診で鑑別できますが、骨折の有無を確認するためにX線(レントゲン)検査を行います。

治療
はずれた関節を整復して、正常に膝が動くかを確認します。
整復後も膝関節が不安定な場合には、脱臼防止用のサポーターを装着します。
スポーツへの復帰は痛みや腫れが治まって運動制限が消失してからになるので、だいたい2カ月以上かかります。

膝蓋骨脱臼の特徴として挙げられるのが反復性です。
整復後も脱臼を繰り返すことが多く、その割合は20%〜50%程度とされています。
このように脱臼を繰り返す場合、また骨折や軟骨損傷が伴っている場合は、手術による治療を検討します。
病態によって手術の方法は異なり、スポーツへの復帰は3カ月〜半年くらいかかります。
膝の痛みもさることながら、なかなかスポーツに復帰できないのは精神的にもつらいですよね。

「膝に痛みや腫れがある」「膝がガクッとなる」など、膝に痛みや違和感を感じる場合は、当院にご相談ください。
適切な治療を受けて早期の回復を目指しましょう。