院長コラム

歩行時のかかとの痛み 「足底腱膜炎そくていけんまくえん

2023.11.14
整形外科の疾患

当院の患者さんは長野市内にお住まいの方が多いですが、中には「診療を受けたいけれど、車の運転ができない…」という方がいらっしゃいます。
そんな方のご来院をお手伝いしたいとの思いで、当院ではワゴン車による送迎を行っています。
当院から半径7km(車で10分)程度の地域にお住まいの方で送迎をご希望の場合は、お気軽にご相談ください。
さて、今回は長時間の立ち仕事や歩行時のかかとの痛み、「足底腱膜炎そくていけんまくえん」について解説します。

足底腱膜炎そくていけんまくえん」の症状と原因
足底腱膜炎とは、かかとの骨から足の指へつながっている腱の膜(足底腱膜)が炎症を起こす病気のことです。
足底腱膜は土踏まずのアーチ構造を支えている部分で、いわばクッションの役割をしています。
この部分に繰り返し負荷がかかることで痛みが生じます。
特に、朝起きたときや長時間座った後で立ち上がったときなどに、かかとや足の指の付け根に激しい痛みが走ります。

初期には足底腱膜とかかとの骨との付着部に微小外傷(小さな傷)が現れ、体重をかけると痛みを感じます。
進行すると、かかとの骨に骨棘こつきょくと呼ばれるトゲのような突起ができて痛みが増し、安静にしていてもジンジンと痛むようになります。


足底腱膜炎の原因として、以下のものが挙げられます。
⚫︎長時間の歩行やランニング
⚫︎高いヒールや合わない靴の着用
⚫︎加齢による腱膜の劣化
⚫︎体重の増加による腱膜への負担
⚫︎扁平足や凹足といった足の形

診断
主に問診や触診によって痛みの程度や部位を確認し、他の疾患との鑑別にMRIを用いることもあります。

次のような症状がある場合は、足底腱膜炎と診断します。
⚫︎足底腱膜とかかとの骨の付着部の辺りを押さえたときに痛みを感じる。
⚫︎長時間立ちっぱなしの状態、また歩行、走行、歩行開始時など、足底腱膜とかかとの骨の付着部の辺りにズキズキとうずくような痛みがある。

治療と予防
足底腱膜に負担がかからないように安静にすることが基本で、保存的治療として以下のようなものがあります。
⚫︎痛みを和らげるための鎮痛剤や湿布の使用
⚫︎アキレス腱や足底腱膜のストレッチやマッサージによるリハビリテーション
⚫︎足底腱膜への負荷を減らすための靴の選択や足底挿板(インソール)の使用

保存的治療で効果がない場合には、手術療法を検討します。
症状によって手術方法も異なりますが、足底腱膜の付着部を切り離す方法や、かかとの骨棘こつきょくを切除する方法もあります。

足底腱膜炎は予防できる疾患であり、日頃から次のことを心がけることが重要です。
⚫︎足に負荷をかけ過ぎないように運動量をコントロールする。
⚫︎日常的に適度な運動やストレッチを行い筋力や柔軟性を高める。
⚫︎適切な体重を維持して足に負担をかけない。
⚫︎自分の足に合った靴を履く。

足の指から足首にかけてそらします。その際、足裏が伸びるようにします。10回を1セットにして、1日3セット以上を目安に行います。



足底腱膜炎は多くの場合、治療に数カ月がかかり、その間は運動が制限されてしまいます。
先に挙げた原因で当てはまる項目の多い方は、意識して予防に取り組みましょう。
すでにかかとの痛みでお悩みの方は、早めに当院にご相談ください。