院長コラム

「こむら返り」に隠れる腰の病気

2023.08.07
整形外科の疾患

梅雨が終わり夏本番。
連日、猛暑日が続きますが、「夜に足のふくらはぎがつって目が覚めた」という経験はありませんか?
それって、もしかすると腰の病気が隠れているかもしれません。

なぜ夏の夜にこむら返りが起きやすいのか?
こむら返りとは、こむら(ふくらはぎ)がつった状態です。これは筋肉の異常興奮によるもので、そのきっかけは日中運動や作業で動きすぎたり、夏場に汗をかいて脱水症状になったりすることで起こりやすくなります。
筋肉の細胞は、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、水素イオンのバランスによって反応のしやすさが変化します。
また、脱水状態に加えて、クーラーで足が冷えて血流が悪くなると、寝返りなどの刺激で筋肉が異常興奮してこむら返りが発生します。
これ自体はサッカー選手が試合中に足がつるのと同じで、病的なことではありません。
しかし、こむら返りには思わぬ整形外科の病気が隠れていることがあるので注意が必要です。

こむら返りに隠れる腰の病気
腰部脊柱管狭窄症ようぶせきちゅうかんきょうさくしょうによって末梢神経に障害があるとこむら返りが起こりやすくなります。
特に中高年に多い病気で、神経の通り道である脊柱管が腰の部分が狭くなることで、腰、でん部、足の痛みやしびれ、歩行障害、排尿障害などの症状があらわれます。
これは加齢、労働、背骨の病気などの影響で変形した椎間板と、背骨や椎間関節から突出した骨などにより、神経が圧迫されることで発症します。
進行すると、下肢の力が落ちたり、尿が出にくくなったり、逆に尿が漏れたりすることもあります。

診断・予防
繰り返し足のつる方は、腰部脊柱管狭窄症ようぶせきちゅうかんきょうさくしょうの可能性があります。
こむら返りと腰部脊柱管狭窄症かの診断は、X線(レントゲン)写真である程度は推測できますが、さらに詳しく検査するためにはMRIや脊髄造影などを用います。
こむら返りの場合は、水分補給やマグネシウムの摂取、漢方薬などで予防ができます。
また、運動を行う前に十分に準備運動を行うこと、日常生活でもマッサージやストレッチなどを定期的に行うことも予防につながります。
一方、腰部脊柱管狭窄症の場合は、日常生活で姿勢を正しく保つことが予防になります。
腰に負担がかからない正しい姿勢と動作を意識することが大切です。
治療としては、リハビリテーション、コルセット、神経ブロックや脊髄の神経の血行を良くする薬などがあります。
歩行障害が進行し、日常生活に支障が出ている場合には手術を行うこともあります。
一時的とはいえツライ痛みが続くこむら返り。寝る前にコップ一杯の水を飲むなど予防を心がけましょう。


「こむら返りが頻繁に起こる」という方は、一度整形外科で相談してみてはいかがでしょうか。