女性の健康にさまざまな影響を与えているのが、女性ホルモンの「エストロゲン」と「プロゲステロン」です。
エストロゲン(卵胞ホルモン)には、女性らしい体を作り、骨や血管の健康を維持する働きがあり、プロゲステロン(黄体ホルモン)には、妊娠を助け、子宮内膜を整える役割があります。
2種類の女性ホルモンは年齢によって分泌量が変化し、特にエストロゲンの変化は影響が大きいといわれています。
更年期とは40代半ばから50代半ばまでを指しますが、この年齢は卵巣の働きが急激に低下し、エストロゲンの分泌が減少する時期です。
そのため、エストロゲンで守られていた骨や関節、血管などの器官で、トラブルや病気のリスクが高まります。
エストロゲン受容体には、αとβの2種類があります。
ERα(エストロゲン受容体α)は、主に生殖器、乳腺、骨、心血管系などで重要な役割を果たし、子宮や乳腺の発育、骨の健康維持、心血管系の保護に関与しています。
ERβ(エストロゲン受容体β)は、主に骨格筋、神経系、免疫系などで重要な役割を果たし、骨格筋の発育や再生、神経細胞の保護に関与しています。
また、免疫系の調節にも関与していて、炎症反応を抑制する役割もあります。
これらの受容体は、エストロゲンが体内でどのように作用するかを決定する重要な要素です。
特に、ERαは骨密度の維持に重要な役割を果たし、骨の健康を保つのに寄与します。
また、関節の健康にも影響を与えることがあります。
①骨の健康
破骨細胞(骨を壊す細胞)の活動を抑えて骨の吸収を減少させることで、骨密度の低下を防ぎます。
また、骨芽細胞(骨を作る細胞)の活動を促進して新しい骨の形成を助け、骨の細胞が健康に生き続けるようにして骨のバランスを保つ役割も果たします。
②関節の健康
炎症反応を抑制する作用があり、これにより関節の痛みや腫れを軽減します。
また、軟骨の分解を防ぎ、関節の健康を維持するのに役立ちます。
エストロゲンの分泌の減少による健康への影響
では、エストロゲンの分泌が減少するとどんな影響があるのでしょうか。
閉経前後の約10年間(更年期)における、関節と骨への影響についてそれぞれみてみましょう。
関節への影響として、エストロゲンの減少がヘバーデン結節の発症に影響をおよぼしていると考えられます。
このコラムでも度々解説しているヘバーデン結節は、手の指の第一関節(爪に近い関節)が変形し、痛みを伴う疾患です。
先に触れたとおり、エストロゲンには関節を保護する効果があるため、その減少により関節に負担がかかりやすくなります。
骨への影響については、エストロゲンの分泌が急激に減少すると、骨を守る効果が弱まります。
エストロゲンの減少により、骨を作る速度よりも骨が壊される速度のほうが速くなり、その結果、骨の密度が低下し骨がもろくなる。
つまり、骨粗鬆症のリスクが高まるということです。
骨粗鬆症になると、ちょっとした衝撃でも骨折しやすくなるため、日常生活に大きな影響をおよぼす可能性があります。
へバーデン結節も骨粗鬆症もエストロゲンの減少に起因するものであり、この2つの疾患は無関係ではありません。
へバーデン結節は骨粗鬆症の中の部分的な症状であり、特に骨粗鬆症初期のまだ骨量が低下する前の状態の人に多く発症すると考えられます。
エストロゲンの分泌がいかに女性の健康に影響を与えているかを理解していただけたかと思います。
加齢による卵巣機能の低下は避けられませんが、ヘバーデン結節も骨粗鬆症も予防や早期の治療に取り組むことで進行を防ぐことができます。
これらの病気に対して、当院では患者さん一人ひとりの病態を見極めたうえで、最良の治療を行っています。
ヘバーデン結節についてはオンライン診察も行っているので、遠方にお住まいの方でも受診が可能です。
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年を重ねても健康な体であり続けるために、当院で早期の治療に取り組みましょう。