院長コラム

「指が変形するのは嫌!」 私がヘバーデン結節の根本治療に取り組むようになった理由

2025.03.31
ヘバーデン結節とブシャール結節
整形外科の疾患

ヘバーデン結節については何度もこのコラムで紹介していますが、なぜ私が根本治療に取り組むようになったのか。
それにはきっかけとなる、ある出来事がありました。

そんなのは治療じゃない、指が変形するのは嫌!

「ねえ、最近指が痛いの。ちょっと診てくれる?」
ある日の朝、妻が手指の痛みを訴えました。
差し出した指を見ても、特に異常は見られませんでした。
手指の疾患はさまざまで、関節リウマチ、手根管症候群、母指CM関節症、ばね指などがあります。
日頃の家事や子育ては妻に任せきりなので、手のオーバーユースよるばね指が考えられました。
「指の使い過ぎかもしれないね。食事はでき合いのものでいいから、少し手を休ませたら」
しばらく安静にして様子を見ることにしました。

ところが、それから1カ月もすると、両手5本の指の第1関節が赤く腫れてきて、痛みも強くなっていると妻は言いました。
妻は当時40代でしたが、その症状からしてヘバーデン結節の可能性が考えられました。
ヘバーデン結節の患者さんは、これまでにも何人か診ていました。
診療ガイドラインでは、ヘバーデン結節の原因は不明で、治療は投薬や関節内ステロイド注射などの対症療法とされています。
そのため、患者さんには次のように説明していました。
「残念ながら指の変形は止められませんが、ずっと痛みが続くわけではなく、最終的に痛みは治まりますよ」
この時、妻にも同じように説明したところ、みるみるうちに妻の表情がかげってきました。
そして、放った一言。
「そんなのは治療じゃない、指が変形するのは嫌!」
予想外の妻の反応に驚いた私ですが、なんとかとりつくろいながら言いました。
「指が曲がるのはどうにもならないけど、痛みが一生続くわけじゃないから」

もはや火に油を注ぐようなもので、その日は険悪な空気が漂い、食事中も言葉を交わしませんでした。

ヘバーデン結節の根本治療を模索

あきらめのつかない妻は、なんとか治療する方法はないものかと自分でいろいろ調べて、自由診療を行っているクリニックにも受診しました。
それでも指の痛みは変わりません。
料理はできず、買い物袋を持つのも大変そうでした。
両手をじっと見つめて、がっくりと肩を落とす妻を見ていると、さすがの私もいたたまれない気持ちになりました。
何か方法はないものかと、そこからヘバーデン結節の根本治療を模索し始めました。

それまでヘバーデン結節について私が知っていたことは、更年期を迎えた女性に多いこと、手をよく使う人にはなりやすいことなどでした。
発症年齢が高いことと圧倒的に女性に多いことなどから、次の仮説を立てました。
「女性のヘバーデン結節は、更年期における女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少に関係している」

この仮説が正しければ、その治療には女性ホルモンの補充が有効なはずである。
そこで、大豆イソフラボンから作られるサプリメントを調べて取り寄せてみました。
「まあ、だまされたと思ってしばらく飲んでみて」と妻に錠剤を渡しました。
妻は半信半疑のようでしたが、少しでも治る可能性があるならと試してみることに。
1、2週間続けたものの症状に変化はありません。
「これ本当に効果があるの?」
「効果が出るまでには多少時間がかかるだろうけど、きっと良くなるから。もうちょっと続けてみて」
そして、4週間くらい経ったある日、妻が私に言いました。
「少し痛みが治まってきたみたい」

サプリメントの使用を続けながら、さらに栄養の吸収を促す薬も加えてみました。
治療を始めてから約1カ月半で指の痛みは完全に治まり、その後も変形することなく寛解しました。


妻の手の写真です。寛解し、ネイルを楽しむこともできています。


「いつまでも美しい手でいたい」というあなたに

つまり、私がヘバーデン結節の根本治療に取り組むようになったのは、妻のおかげというわけです。
妻からの一言がなければ、いまでも患者さんに対して教科書的な対応を続けていたことでしょう。
私がそれまで診てきた患者さんも、きっと心の中では、やるせない思いをされていたのではないでしょうか。
毎日たくさんの患者さんを診ていると、その方の生活や気持ちにまで思いがいたらなくなりがちです。
しかし、病気を治すことだけが医師の役割ではなく、患者さんの気持ちを汲み取って安心してもらえてこそ、本当のケアと言えるのだと思います。
それに気づかせてくれた妻にはとても感謝しています。
ちなみに当院では、ヘバーデン結節の患者さんには、錠剤を一つ一つシートから取り出さずに済むよう一包化してお出ししています。
これは妻のアイデアで、少しでも指が痛む患者さんの負担を減らしたいとの思いからでした。
「いつまでも美しい手でいたい」
それは年齢や性別に関係なく、誰もが願うことでしょう。
ヘバーデン結節でお悩みの方は、治らないものと諦めずに、お気軽に当院にご相談ください。

あなたの笑顔を取り戻すために、一緒に根本治療に取り組んでまいりましょう。