院長コラム

「大豆食品でヘバーデン結節が治る」は本当か?

2025.04.10
ヘバーデン結節とブシャール結節
整形外科の疾患

最近、へバーデン結節の患者さんを診ていて、エクエルの服用を勧めると「私はエクオールを作れるので大丈夫です」という方がいます。
エクエルは、女性ホルモンのはたらきを助ける物質「エクオール」を主成分とする食品で、当院ではヘバーデン結節の治療に用いています。
最近では、体内でのエクオールの産生を測定する検査キットも販売されており、自分で調べることもできます。
しかしながら、エクオールを産生できるにもかかわらず、なぜ症状が出ているのでしょうか?




1日あたりのエクオール摂取量の目安

じつはコレ、食生活に大きな関係があります。
どういうことかと言うと、エクオールの体内での産生が可能でも、産生に必要な大豆成分を十分に摂取できていないということです。
その理由は食習慣の変化にあります。
昔の日本では豆腐や納豆などが食卓に並ぶ頻度が高かったですが、食生活の欧米化に伴い大豆を摂取しづらくなっています。
エクオールは、食事によって摂取された大豆イソフラボンの一つであるダイゼインが、腸内細菌により代謝されて産生されます。
日本人の約2人に1人はエクオールを産生するための腸内細菌を持っていますが、残りの半数の人は産生菌を持たないとされています。
エクオール産生者であっても、その内の約半数は大豆食品の摂取が不十分で、効果の期待できる量のエクオールが産生できていないという統計もあります。
1日あたりのエクオール摂取量の目安は10mgとされており、これを大豆食品で摂るには次の量が必要です。
●豆腐=2/3丁(200g)
●納豆=1パック(50g)
●豆乳=1杯(200ml)
この量を365日毎日摂取する必要があります。これはなかなか大変なことですね。
また、一度に多く大豆食品を摂っても、エクオールは体内に蓄積することができません。
体内で作用した後は、1日か2日でほとんどが尿と一緒に排出されてしまいます。
なので、へバーデン結節の症状がある方は、体内でエクオールを産生できるとしてもエクエルを服用してほしいのです。


ヘバーデン結節に似た手指の病気に注意

「自分でエクエルを買えば病院にかかる必要はないのでは?」と思う方もいるかもしれません。
たしかに自分で購入して服用しても、エクオールを摂取することは可能です。
ただし、医療機関を受診せずに、自分でヘバーデン結節と判断して飲み始めることはお勧めできません。
というのは、ヘバーデン結節に似た手指の病気が他にもあるからです。
これについては、前にこのコラムでも解説しました。
ヘバーデン結節・ブシャール結節に似た手指の病気


手指に痛みや腫れ、こわばりが生じた場合は、まずは医療機関を受診しましょう。
関節リウマチや手根管症候群といった別の病気であれば、言うまでもなくエクエルを服用しても改善はしません。

当院では、患者さんの病態を見極め、適切な治療を行っています。
ヘバーデン結節の患者さんには、一人ひとりの病態に合わせて、エクエルに加えて補助的な薬も処方しています。
また、ヘバーデン結節は一時的に症状が治まっても、再発する可能性があるため注意が必要です。
経過を見ながら、確実に治療を行ってまいりましょう。