院長コラム

親指の付け根に痛み 「母指ぼしCM関節症」

2023.11.01
整形外科の疾患

整形外科を受診するのは、たいてい体に痛みや異変を感じた場合ですが、その原因が分かっている場合と分かっていない場合があります。
原因が分からないと特に不安を感じるものですよね。
痛みを自覚するきっかけは、日常動作においてが大半だと思います。
今回解説する病気も日常動作で自覚する痛みです。

母指ぼしCM関節症の症状と原因
「ビンのふたを開ける時に親指の付け根が痛む」
「ドアノブを回す時に手の関節が痛む」。
握る、回す、ひねるなどの動作で親指の付け根が痛む場合は、
母指ぼしCM(シーエム)関節症の可能性が考えられます。

母指ぼしCMとは親指の付け根の関節で、他の指と向き合ってつまみ動作を行う際などによく動く部分です。
母指CM関節症の主な原因は、手の使い過ぎや加齢です。
これらの原因でクッションの役割をしている関節軟骨がすり減り、骨同士が直接当たることで痛みが生じます。
進行すると関節が腫れてふくらみ、さらに進むと亜脱臼を引き起こし、親指が変形することで外側に開きにくくなります。
この病気は特に更年期以降の女性に多く見られ、女性ホルモンの減少が関係していると考えられます。


診断
手関節の痛みや腫れは母指CM関節症だけでなく、以前このコラムでも紹介したドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」や関節リウマチにも見られる症状です。
そのため、X線(レントゲン)検査を用いて他の病気との鑑別を行います。
X線写真に関節の変形が見られれば、母指CM関節症と診断が付きます。

治療
母指CM関節症の治療は、痛みを和らげるための鎮痛剤や湿布などを利用した保存的治療が基本です。
多くの場合、関節を安静に保てば自然に改善していきますが、痛みが頻繁に起こる場合は関節を装具で固定したりテーピングしたりする必要があります。
また関節内の炎症が強く、痛み、腫れ、熱感などがある場合は、関節内にステロイド注射をすることもあります。
これらの治療で改善しない場合には、ダメージを受けた骨の一部を切除するための手術が必要になることもあります。


体の痛みを自覚した時に、すぐに病院に行く方もいれば、自然に痛みが治まるのを待つ方もいます。
そのまま治癒する場合もあれば、さらに悪化する場合もあります。
いまの時代はインターネットで調べればある程度の見当は付くかもしれませんが、結局のところは医師でなければ分かりません。
体の痛みや異変には必ず何らかの理由があります。理由が分かれば適切な治療法が分かります。

治療の開始時期が早ければ早いほど回復も早まり、つらい思いをする期間も短く済みます。
体のことで気になることがありましたら、 お気軽に当院にご相談ください。
痛みや症状を改善し、少しでも早く日常生活に戻れるようにお手伝いします。