院長コラム

スマホの使い過ぎに要注意、手首の痛み「ドケルバン病」

2023.09.25
整形外科の疾患

私の普段の移動はもっぱら車ですが、たまに学会への出席などで電車に乗ることがあります。車内を見回すと、老若男女問わずスマートフォンをのぞき込んでいる人が多いことに気づきます。私が医学生だった頃は(30年以上前のことですが)、電車の中で本や新聞を読んでいる人が圧倒的に多かったのですが、ずいぶんと時代は変わったものです。
整形外科の領域では、社会的背景やライフスタイルの変化によって増える病気というものがあります。
今回はその一例であるドケルバン病について解説します。

ドケルバン病の症状と原因
ドケルバン病とは聞き慣れない言葉ですが、1895年にこの病気を最初に報告したスイスの外科医フリッツ・ド・ケルバン(Fritz de Quervain)の名前に由来しています。
別名で「狭窄性腱鞘炎きょうさくせいけんしょうえん」とも呼ばれるように、これは手首の腱鞘炎けんしょうえんの一種です。

手を広げたときに、手首の親指側の部分に腱が張って皮下に2本の線が浮かび上がります。ドケルバン病はその2本の線が通る腱鞘けんしょう(トンネル)に生じる炎症です。
この部分に痛みや腫れが現れ、物をつかんだり雑巾を絞ったりする動作などで強い疼痛が走ります。


ドケルバン病は、特に次のような人に多く発症します。
⚫︎仕事などで親指や手首をよく使う人
⚫︎更年期の女性
⚫︎出産前後の女性

一番の原因は手首の使い過ぎです。

料理人、美容師、ピアニスト、テニスプレーヤーなど、親指や手首をよく使う仕事に就いている人に多く見られ、かつては職業病とも言われていました。
それが、ここ10年、20年で一般の人にも多く見られるようになりました。
デスクワークなどでパソコンを使ったり、長時間スマートフォンを操作したりする機会が増えたことがその背景にあります。

発症が女性に多いのもこの病気の特徴です。
これは女性ホルモンのバランスが乱れて手がむくみやすくなることが炎症に関係していると考えられます。
また、出産前後の女性については、ホルモンバランスの乱れに加えて、赤ちゃんを抱きかかえたり首を支えたりすることで手首や親指に負荷がかかることとも関係していると思われます。

診断
X線(レントゲン)撮影では確認できないため、問診や触診で診断します。
診断には次のテストがあり、セルフチェックもできます。

⚫︎アイヒホッフテスト
親指を中に入れて手を握り、そのまま手を小指のほうに傾けます。この動作が痛くてできない場合は、ドケルバン病の可能性があります。
⚫︎フィンケルシュタインテスト
親指を内側に倒し、反対の手で親指をつかんで小指の方に引っ張ります。引っ張って痛む場合は、ドケルバン病の可能性があります。


治療と予防
親指や手首の使い過ぎが主な原因なので、サポーターやテーピングで患部を固定し、しばらく安静にすることで改善することもあります。
基本的には保存的治療で、炎症が軽度の場合は消炎鎮痛薬の湿布や塗り薬を使用し、重度の場合はステロイド薬を注射します。
薬による治療で改善しない場合や再発を繰り返す場合には手術を行います。
手術では手首の皮膚を2、3cmほど切開し、腱鞘を切り開きます。腱が圧迫から解放されるため、痛みなどの症状はなくなります。手術時間は30分程度で、日帰り手術です。


予防としては、親指や手首に負荷をかけ過ぎないことです。
手を使う仕事などではなかなか難しいかもしれませんが、使い過ぎたら休ませることが大切です。
指や手首を伸ばすストレッチや親指の付け根周辺のマッサージも効果があるので、休憩時間に意識して行うことをおすすめします。
また、スマートフォンを使う際は片手だけを使うのではなく、片方の手で持ってもう一方の手で操作すると指や手首に負担がかかりにくいです。

ドケルバン病は、放置すると症状が悪化し日常生活に支障をきたすおそれがあります。
また、以前コラムで解説した「ばね指」「手根管症候群」「ガングリオン」など、他の病気の可能性も考えられるので、症状に気づいたら早めに整形外科を受診しましょう。

「親指側の手首が腫れている」「親指を動かすと手首が痛む」という方は、当院までお気軽にご相談ください。