院長コラム

低温やけどに注意!原因と予防法を分かりやすく解説

2024.01.22
整形外科の疾患

いまは二十四節気でいうところの「大寒」で、一年の中で最も寒い時期ですね。
寒さ対策に、湯たんぽや使い捨てカイロを使っている人も多いでしょう。
手軽に暖を取れて便利なものですが、じつはこれ「低温やけど」の原因になるのです。
今回は、低温やけどの症状や予防法について解説します。

低温やけどの原因と症状
「低温やけど」とは、熱湯や火などに触れて起こる「高温やけど」よりも低い温度のやけどのことです。
ここでいう低温とはどのくらいの温度かというと、だいたい44℃〜50℃前後です。
しばしば、湯たんぽや使い捨てカイロ、電気カーペットといった暖房器具などに、皮膚が直接、数分から数時間にわたって触れ続けることで起こります。
寝ている時などは数時間かけて起こることが多いですが、50℃に近いものだと数分触れているだけで起こることもあります。
高温やけどとの大きな違いは、皮膚の表面ではなく奥でじわじわと進行する点です。
短時間触れただけでは痛みは感じませんが、長時間触れ続けると自覚症状のないまま皮膚の奥を傷めていきます。
つまり、低温だからといって「軽いやけど」というわけではなく、高温やけどと同様に重症化する恐れもあるのです。

低温やけどの症状は、やけどの深さによってⅠ度からⅢ度まで分類されます。
Ⅰ度:皮膚が赤く腫れてヒリヒリと痛む。数日で治る。
Ⅱ度:水ぶくれができて強い痛みが生じる。1〜4週間で治るが、跡が残ることもある。
Ⅲ度:皮膚が白や黒に変色して壊死する。痛みを感じない。自然に治ることは困難で、手術が必要な場合もある。

表皮までの損傷であるⅠ度と浅いⅡ度であれば跡は残りませんが、深いⅡ度とⅢ度になると多くの場合に傷跡が残ります。
損傷が皮膚全層・皮下組織まで及ぶと、皮膚の切除や移植を必要とすることにもなりかねません。
低温やけどが恐ろしいのは、損傷に気づきづらく、たとえⅢ度まで症状が進行していても自覚できないところです。


低温やけどの予防と対処
低温やけどは、その危険性を理解しておけば基本的に防げるものです。
まずは、どんなところにリスクがあるのかを理解して予防に努めましょう。
注意することとしては、次のものがあります。

湯たんぽ・電気あんか  :就寝時には布団から出すか、体から離して使用。
電気毛布・電気カーペット:付けたまま眠らない。
使い捨てカイロ     :肌に直接触れないようにする。貼るタイプのものは衣類の上から貼る。
ノートパソコン     :長時間膝の上に置いて作業しない(バッテリーが熱くなるため)。

低温やけどはどんな人にも起こるものですが、特に注意が必要なのは、皮膚が薄い高齢者や乳児、知覚・運動能力に麻痺がある人です。
また、飲酒をしている人も要注意です。
実際に当院で診た患者さんにも、酔って眠り込んでしまい、暖房器具で低温やけどをしたという方がいらっしゃいます。

では、低温やけどになってしまった場合はどうしたらよいか。
まずは、応急処置として流水で冷やします。目安はだいたい10分〜30分です。
もし脱衣ができない場合は服の上から冷やしてください。
水ぶくれができている場合は、潰さずそのままにします。
というのも、水ぶくれを潰した跡から雑菌が入り込んでしまい、症状が悪化するリスクがあるからです。
水ぶくれを潰してしまった場合も、破れた皮はそのままにしてください。
そして何より、できるだけ早く病院を受診すること。
しばらく様子を見てから病院に行くという方がいますが、低温やけどは見た目だけでは判断できません。
放置して症状が進行すると、手術もしくは長期間の治療が必要になる可能性があり、傷跡が残ることもあります。
見た目には軽く見えても、必ず病院を受診しましょう。

まだまだ寒い日が続きます。暖房器具の出番も多いでしょう。
これらを使う際には、先述した予防法を忘れずに低温やけどに気を付けたいものです。
低温やけどに気づいたら、お早めに当院にご相談ください。