院長コラム

突き指などで第一関節が曲がる「マレット変形」

2023.10.02
整形外科の疾患

10月に入ってだいぶ暑さが落ち着き、スポーツに良い季節になりました。
当院の近くにある若穂中央公園でも、運動場で野球やサッカーなど、さまざまな活動が行われています。さて今回は、球技などで起こりやすいケガマレット変形についてのお話です。

マレット変形の症状・原因
野球やバレーボールなどの手を使うスポーツでは、しばしば突き指が起こります。
突き指とは、指先に大きな力が加わることで生じるケガの総称です。
突き指の一種で、手指の第一関節(DIP関節)が曲がったまま伸ばせなくなる状態をマレット変形といいます。
指先にボールが当たるなどして強い衝撃が加わったり、何らかの衝撃で腱が切れたりすることで起こります。
球技中に起こるものは、特に中指と薬指に多発します。


マレットというと、長野県でおなじみの「マレットゴルフ」を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、これはいわゆる小槌(こづち)のこと。
指先が小槌のように屈曲していることに由来して、「槌指(ついし、つちゆび)」とも呼ばれています。

病態
マレット変形には2つのタイプがあります。
①腱性マレット
指を伸ばす腱が切れた状態です。指が曲がったまま伸展できませんが、痛みはほとんどありません。
②骨性マレット
第一関節の関節内で骨折が生じた状態です。指が曲がったまま伸展できず、痛みや腫れがあります。


診断
指の形状や動きを見ればマレット変形だと分かりますが、診断にはX線(レントゲン)撮影を行います。
これは腱性マレットか骨性マレットかを見分けるためで、病態によって治療方法が変わってきます。

治療
腱性マレットの場合は、装具を付けて腱を固定し癒合を目指します。
ただし、腱が断裂してから時間が経って自然治癒が難しい場合は、手術が必要なこともあります。
骨性マレットの場合は、装具による保存的治療も可能ですが、手術による骨折の整復が必要な場合もあります。
手術というと驚かれる方もいますが、切開せずに皮膚の上から細い鋼線を入れる方法なので体への負担は少ないです。
どちらの場合もケガをしてから放置すると、回復に時間がかかるだけでなく、指の機能が悪化する可能性があります。
また、完治しない状態でスポーツなどを再開すると、腱の再断裂や骨折部の離開につながるため注意が必要です。


当院を受診する方の中でも「まさか折れているとは思わなかった」という人がいます。
ただの突き指と判断せずに、「指先に痛みや腫れがある」「指の第一関節が曲がったまま伸ばせない」という場合は、早めに整形外科を受診しましょう。
スポーツの秋、ケガには気をつけて運動を楽しみたいものですね。