院長コラム

「フレイル」とは? 要介護にならないための予防法

2024.03.11
整形外科の疾患

突然ですが、「フレイル」という言葉を聞いたことがありますか?
聞き慣れない言葉かもしれませんが、これは高齢者に見られる心身の活力が低下した状態のことを言います。
海外の老年医学の分野で使われている英語の「Frailty(フレイルティー)」が語源で、日本語に訳すと虚弱や老衰といった意味です。
フレイルは筋力の低下や疲れやすさが特徴で、放置しておくと生活の質を落とすだけでなく、さまざまな合併症を引き起こし死亡率も高めるリスクがあります。
しかし、早期に改善に取り組めば健康な状態に戻すことができます。
今回は、フレイルの予防を中心に解説します。

フレイルの原因
フレイルの原因には、次の3つの要素が影響しています。
①身体的要素②心理的要素③社会的要素です。
それぞれについて見ていきましょう。

①身体的要素 ― 筋肉の衰え(サルコペニア)、運動器の障害、栄養不足など。

②心理的要素 ― うつや軽度の認知症など。

③社会的要素 ― 閉じこもりや社会的孤立など。

フレイルの特徴は、これらの要素が互いに影響し合い、さらに状態が悪化していくことにあります。
例えば、身体機能が衰えると外出が減り、家に引きこもりがちになり、社会とのつながりが希薄になります。
そうした生活が続くことで、さらに身体機能や認知機能が低下し、心身の機能がどんどん低下していくという悪循環に陥るわけです。

一度フレイルの状態になると、病気にかかりやすくなったり、けがをしやすくなったりと健康を害するリスクが高まります。
健康な状態であれば風邪をひいても大事には至りませんが、フレイルの状態では風邪をこじらせて肺炎などを発症することがあります。
また、運動機能が低下することで転倒が起こりやすくなり、打撲や骨折をきっかけに寝たきりになってしまうこともあるのです。


フレイルかどうかをセルフチェック
フレイルは病気ではなく、健康と要介護の中間地点にある状態を指すため、検査などで明らかな異常が見つかることはまれです。
フレイルかどうかを判断するためによく使われている基準として、次のチェック項目があります。
いくつあてはまるかチェックしてみましょう。

①体重減少
半年間で5%以上の意図しない体重減少がある(60kgの人であれば、3kg以上の体重減少)

②疲労感
理由もなく疲れたような感じがする日が、週に3~4日以上ある

③歩行速度の低下

④握力の低下

⑤身体活動量の低下

基準では、上記の5項目の内、3つ以上が該当する場合をフレイルとし、1つか2つ該当する場合をフレイルの前段階であるプレ・フレイルとしています。


フレイルの予防
フレイルの状態にならないためには予防が必要であり、すでにフレイルの状態の人は改善に取り組む必要があります。
早い段階でフレイルに気付くことで、健康に近い状態まで改善し、心身機能の低下を防ぐことができるのです。

では、どんなことに取り組めばよいのか。
残念ながらフレイルの特効薬などというものはなく、改善には生活改善や運動を行う必要があります。
具体的には、食事は規則正しく、一汁三菜を基本にいろいろな食材をバランスよく取ることを心掛けてください。
また、筋肉のもとになるタンパク質(肉、魚、大豆製品など)と骨を強くするカルシウム(牛乳、乳製品、小魚など)を含む食品を積極的に取るとよいでしょう。
運動については、ストレッチや歩行など、ご自身の身体能力に合った方法で無理のない範囲で行います。
過ぎたるはなお及ばざるがごとしで、過度な運動はけがにつながるので注意が必要です。


一般的に患者さんは症状が重くなってから病院を受診しますが、もっと早く治療に取り組めば回復が早まり苦しみも少なく済みます。
ご自身やご両親など、フレイルの基準にあてはまる項目がないかをチェックして、該当する項目が1つでもある場合は、病院での受診をおすすめします。
当院では、患者さん一人ひとりに合った方法で改善に導きます。
フレイルでご不安な方は、お気軽にご相談ください。