院長コラム

子どもも大人も放置していませんか? スポーツによる慢性的な膝(ひざ)の痛み 

2024.03.28
整形外科の疾患

以前、当コラムで膝に痛みが出る病気「オスグット病」について解説しました。
この病気は小学校高学年から中学生くらいの発育期の子どもに多く見られ、スポーツでのジャンプ動作やキック動作などを繰り返すことで発症します。
当院には、子どもに限らず膝の痛みで受診に訪れる患者さんが多くいらっしゃいます。
その多くはオーバーユース(使い過ぎ)によるもので、あらゆる年齢で見られます。
その中には、初めはスポーツ時のみの痛みで我慢していたが、常に痛むようになり来院したという方も少なくありません。
今回は、「スポーツによる膝の慢性障害」について解説します。

スポーツによる膝の慢性障害
膝の慢性障害は、ジャンプやランニングなどの動作を長時間、繰り返し行うことによって起こります。
そのことからオーバーユース(使い過ぎ)症候群とも呼ばれています。
膝の障害といっても部位によって、その病態は異なります。

靱帯や腱が骨に接する部分は、筋肉のはたらきによる負荷が集中しやすく、組織の小さな損傷が生じます。
❶❷「ジャンパー膝」は、大腿四頭筋腱(膝のお皿の上に付着する腱)や膝蓋腱(膝のお皿の下に付着する腱)に生じる炎症で、その名の通り、バレーボールやバスケットボールなどのジャンプや着地を繰り返す競技をしている人に多く見られます。
❸「鵞足炎がぞくえん」は、膝の内側下方の脛骨の周囲に生じる炎症で、ランナーに多く見られます。
❹「腸脛靭帯炎ちょうけいじんたいえん」は、鵞足炎と同様にランニングなどで発症することが多いトラブルで、膝の曲げ伸ばしによって靱帯と骨の間に摩擦が生じることで、膝の外側に炎症が起こります。

これらの発生要因は、肉体的なものと環境によるものの2つに分けられます。
肉体的な要因としては、筋力不足、筋力のアンバランス、骨の成長と筋の伸びとのアンバランス、体の柔軟性不足、過度のO脚・X脚などが挙げられます。
環境的な要因としては、過度なトレーニング、選手の体力や技術に合わない練習、不適切な靴の着用、硬すぎたり軟らかすぎたりする練習場などが挙げられます。

膝の慢性障害の予防と治療

膝の慢性障害の予防法としては、上記で挙げた発生要因を意識して、けがをしにくい体づくりや環境づくりを目指すことです。
スポーツの前には、ストレッチングで内転筋や大腿四頭筋腱、腸脛靭帯をよく伸ばし、スポーツの後にはアイシングを15分ほど行いましょう。
運動環境も体に負担がかかっていないかなど、あらためて見直してみましょう。


すでに膝に痛みがある場合は、重症度によって治療を行う必要があります。
膝の慢性障害は、次の4つの痛みの程度に分けられます。
軽 症 ー スポーツはできるが、その後に痛む。
中等症 ー スポーツ中と後で痛むが、プレーには支障ない。
重 症 ー 常に痛み、プレーに支障をきたす。
最重症 ー 腱や靭帯が切れる。

軽症から中等症の場合は、適切なコンディショニングでスポーツは続けられますが、アイシングや貼り薬・塗り薬などでケアしながら、それ以上に悪化させないことが大切です。
注意したいのは、痛みがあってもプレーに支障がないため、我慢して運動を続けてしまうこと。
そうすると、どんどん症状が悪化してしまい、重症に至るケースもあります。
重症の場合は、スポーツ活動を一時的に中断し、理学療法や手術が必要になることもあります。
痛みの程度にかかわらず、症状の悪化や再発防止のためにも整形外科を受診することをおすすめします。
また、スポーツへの復帰のタイミングは患者さん自身では判断が難しく、医師の話も聞きながらしっかりと見極めたいところです。 

膝の慢性障害は、日常的にスポーツをする人であれば誰にでも起こりうるもの。
スポーツ障害は、選手のパフォーマンスに影響を及ぼすだけでなく、日常生活にも支障をきたすことがあります。
放置せずにしっかりと治療することがなによりも大切です。
「膝を曲げ伸ばす際に引っかかるような違和感がある」「膝の痛みがなかなか治まらない」など、膝のことで気になる方は、当院にご相談ください。