院長コラム

この痛み、もしかして骨折?
「いいえそれは骨挫傷こつざしょうです」

2024.06.18
整形外科の疾患

「1カ月くらい前に転倒して膝を強くぶつけました。歩くことに問題はないけど膝の痛みがまだ治まらないです。ヒビが入っているのでは?」
「骨折の場合はかなり腫れて歩けないので、おそらく折れてはいないと思いますよ」

骨折を心配して来院された患者さんとの会話です。
案の定、X線(レントゲン)では骨の異常は見つかりませんでした。
これは「骨挫傷こつざしょう」と呼ばれる、いわば骨折の手前の状態です。
どんな損傷なのか詳しく解説しますね。

骨挫傷こつざしょうとは?
骨挫傷とは、骨に過度な衝撃が加わって起こるけがのことで、骨内部に炎症や内出血が生じた状態です。
交通事故やスポーツ時の衝突で起こることが多く、特にサッカーやバスケットボールでの相手選手との接触、野球のデッドボールなどが原因で損傷をきたします。
また、外部からの衝撃ばかりではなく、膝などをひねった際に骨と骨がぶつかることで起こることもあります。
具体的には、次のような症状がみられます。
⚫︎指で押すと強い痛みがある
⚫︎軽く幹部が当たるだけでも強い痛みがある
⚫︎動かすと軽く痛む
⚫︎腫れは少ない
⚫︎痛みが引かず長く続く

骨折との違い
以前の記事で、骨折について解説しましたね。
ヒビも骨折? 骨折の種類と症状をわかりやすく解説

骨折には、完全骨折(完全に折れている状態)と不完全骨折(ヒビが入ったり部分的に欠けている状態)の2つがあります。
骨挫傷こつざしょうはそのどちらでもなく、骨折の手前の状態といえます。
骨折とは異なり、X線やCT検査では異常が見つからないことが多く、MRI検査で骨の内出血の有無を確認します。


骨挫傷の治療
受傷直後は、打撲だぼくなどの時と同様に、「RICE処置」が有効です。
これは、Rest(安静)・Icing(冷却)・ Compression(圧迫)・Elevation(挙上)の4つの要素から成る応急処置方法のことで、内出血や腫れを抑え、回復を助ける効果があります。
スポーツ時のけが いざという時に知っておきたい「RICE処置」

治療方法としては安静にすることが基本で、痛みが激しい場合は消炎鎮痛剤の服用や外用剤の塗布で痛みを緩和します。
1、2カ月で症状が改善することが多いですが、無理をして動かしてしまうと治りが遅く慢性化してしまうことも。
スポーツをしている方は、早く復帰したいとの焦りから無理をしがちですが、ここは急がば回れ。完全に痛みが治まってから動くようにしましょう。

骨挫傷は、痛みをがまんして放置しておくと悪化してしまう可能性があります。
「傷がないのに痛みが続く」「患部を押すと強く痛む」など、気になる症状がある場合はお早めに当院にご相談ください。