7月にヘバーデン結節(およびブシャール結節)のオンライン診察を再開して以来、利用される患者さんが増えています。
一般診療と並行して行っているため、現在は一日お一人のみの診察ですが、全国からお申し込みをいただいています。
患者さんの中には初診時のみ来院して、再診はオンライン診察で受けられる方もいます。
初診からオンライン診察でも可能ですが、来院していただくと各種検査が受けられるので、より体の状態を把握することができます。
今回は、ヘバーデン結節が疑われる場合に受けていただきたい検査について解説します。
・血液検査
指の関節の痛みで当院を受診した患者さんには、血液検査を受けていただいています。
これは、ヘバーデン結節と同様に指の関節が痛む病気である関節リウマチと鑑別するためです。
オンラインでの視診や問診でも鑑別は可能ですが、血液検査を受けていただければより確実です。
検査結果で、リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体といった関節リウマチに特徴的な因子の数値の上昇が確認できれば確定診断ができます。
遠方にお住まいで当院に来られないという方で、他院での検査結果をお持ちであれば、事前に送っていただくことで体の状態を正確につかめます。
・X線検査(レントゲン検査)
X線検査は、指の関節の変形や骨の異常を確認するために有効で、関節の隙間が狭くなっているか、骨の変形があるかなどを確認できます。
これにより、関節リウマチ変形性関節症などの他の関節疾患との鑑別が可能です。
・骨密度検査
血液検査に加えて、もう一つ受けていただきたいのが骨密度検査です。
というのは、ヘバーデン結節と同時に骨粗鬆症も進行している可能性があるからです。
この2つの病気の関連性については何度かこのコラムでも解説しています。
・ヘバーデン結節と骨粗鬆症、重症化を防ぐためにできること
・更年期から急増する、ヘバーデン結節と骨粗鬆症
・女性ホルモンが減少すると骨がもろくなる!?骨粗鬆症とへバーデン結節の関係とその治療について
どちらの病気もその主な原因は、更年期におけるエストロゲン(女性ホルモン)の減少にあります。
ここで、骨粗鬆症における骨強度低下のメカニズムについておさらいしましょう。
骨強度低下のメカニズム
骨には「形成」と「吸収」の2つのプロセスがあり、この骨の新陳代謝機構のことを骨リモデリングと呼びます。
1. 骨吸収
成熟した破骨細胞は、骨に接触する面で酸を分泌し、骨の無機質を溶かします。
また、破骨細胞は特定の酵素(カテプシンK)を分泌して、骨のタンパク質を分解します。
2. 骨形成
骨の吸収が終わると、骨芽細胞が骨の表面に付着し、骨形成が始まります。
これには、コラーゲンや他の有機物質が分泌され、それが石灰化して硬い骨になります。
この一連の過程には約3カ月かかり、常に全骨格の3〜6%がリモデリングされています。
リモデリングは骨の強度を保ち、体のカルシウムバランスを維持する重要な役割を果たします。
エストロゲンには骨吸収を抑える効果がありますが、これが減少すると骨形成が骨吸収のスピードに追い付かなくなり、骨密度の低下および骨質の劣化によって骨強度が低下。
これを放置しておくと骨粗鬆症につながります。
治療のアプローチ
ヘバーデン結節は痛みや腫れといった症状で発現しますが、骨粗鬆症は自覚症状がないため気づかずにいる場合が多いです。
2つの病気はヘバーデン結節の症状が先に発現するものの、同時に骨粗鬆症も進行していると考えられます
いずれの病気もエストロゲンの急激な減少に起因しているので、その治療にはエストロゲンの補充が有効です。
具体的な治療方法として、エストロゲンと似たはたらきをするエクオールを補充します。
これは大豆イソフラボン由来の成分ですが、体内でエクオールを産生する能力には個人差があるため、大豆食品を食べれば必ずエクオールを摂れるわけではありません。
そのため当院では、エクオールを効率よく摂取できる大塚製薬の「エクエル」というサプリメントをお出ししています。
このサプリメントは市販されているのでインターネットなどでも購入できますが、偽造品も多く出回っているようなので医療機関で出してもらうのが安心です。
また、当院ではエクオールの効果をさらに高めるために、ビタミン剤をはじめとする補助的なサプリメントも併せてお出ししています。
サプリメントは患者さんの病態を見極めたうえでお出しし、経過を見ながら種類や組み合わせを調節しています。
「指の関節が痛い」「ヘバーデン結節かもしれない」と思ったら、ひょっとすると骨粗鬆症も同時に進行している可能性があります。
まずは整形外科を受診して、必要な検査を受けることをおすすめします。
いずれの病気も早期の発見と治療が重要です。
「指の第一関節が痛い」「朝起きると指の関節が痛い」「更年期の症状がある」など、気になることがありましたら、当院までお気軽にご相談ください。
その痛みをあきらめないで、根本治療に取り組みましょう。