院長コラム

「膝(ひざ)が痛い」 その痛みの原因と治療法を解説

2024.11.14
整形外科の疾患

立冬を過ぎて、長野市もいよいよ冷え込みが厳しくなってきました。
寒くなると体の血流が悪くなり、肩や首すじにこりや痛みが出たり、膝痛が起きたりします。
膝の痛みは、老若男女問わず多くの人が経験する症状です。
当院にも長野市内を中心に、須坂市や千曲市などの近隣の地域から、膝の悩みを抱えて来院される患者さんが多くいます。
膝の痛みの原因や症状はさまざまで、このコラムでも度々解説してきました。


子どもも大人も放置していませんか? スポーツによる慢性的な膝の痛み
変形性膝関節症の症状と治療法・膝の変形を防ぐ方法
スポーツ中に起こりやすい膝のけが 「膝蓋骨脱臼」
ひざの痛みや炎症を抑える効果が期待できるヒアルロン酸注射


日常生活で膝の痛みがあると、歩行や階段の上り下り、さらには座ったり立ったりする動作が困難になることがあります。
今回は、膝の痛みの原因や治療法、予防策について詳しく解説します。

膝の構造と機能


膝関節は、主に大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(膝のお皿)などから構成されており、これらの骨をつなぐ靭帯や軟骨、筋肉が膝の安定性と動きを支えています。
膝関節は、歩行やランニング、ジャンプなどの動作において重要な役割を果たしており、そのために膝にかかる負担も大きくなります。


膝の痛みの症状と原因


膝の痛みの主な症状には、痛み、腫れ、硬直、動きの制限などがあり、その原因は多岐にわたります。
これらの症状を問診や身体検査、画像診断(レントゲン、MRI、CTスキャン)などで鑑別し、痛みの原因を特定して治療を行います。
その原因として考えられるものを下記に挙げます。


①けが
膝のけがには、膝関節部に疼痛や腫れが生じる膝靭帯損傷、膝の曲げ伸ばしに支障をきたす半月板損傷などがあります。これらのけがは、スポーツや事故などによる膝への強い衝撃や、膝を酷使する運動でのオーバーユース(使い過ぎ)が原因で発生します。特に、前十字靭帯(ACL)や内側側副靭帯(MCL)の損傷は、スポーツ選手に多く見られます。


②変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減り、変形して痛みが生じる疾患です。初期の場合は少し休めば痛みがとれますが、だんだんと正座や階段の上り下りが困難になり、末期になると安静時にも痛みがとれず変形が目立つようになります。特に女性に多くみられる疾患で、高齢になるほど罹患率は高くなる傾向があります。


③その他の原因
自己免疫疾患の一種である関節リウマチは、膝関節も影響を受けることがあり、痛みや腫れ、関節の変形が進行することがあります。その他に、過度の使用や繰り返しの動作によって引き起こされる、滑液包炎(かつえきほうえん)や腱炎(けんえん)。また、成長期特有の痛みであるオスグッド病などがあります。


治療とリハビリテーション


膝の痛みの治療法は、原因や症状の程度によって異なるため、これらの症状が現れた場合は、早期に診断を受けることが重要です。
主な治療法とリハビリテーションの方法を紹介します。


・保存療法
保存療法には、休息、アイシング、圧迫、挙上(RICE療法)などがあります。これらの方法は、膝の痛みや腫れを軽減し、回復を促進します。また、痛みや炎症を抑えるために、鎮痛剤や抗炎症薬を使用します。必要に応じて、関節内の潤滑を改善し、痛みを軽減するヒアルロン酸注射や炎症を抑えるステロイド注射といった関節内注射を行います。


・手術療法
炎症が進んで膝関節が変形してしまった場合、保存療法や薬物療法で効果が見られない場合などに手術療法を検討します。関節鏡手術や人工膝関節置換術などがあり、症状や原因に応じて適切な方法を採ります。


膝の痛みが改善した後も、リハビリテーションを続けることが重要で、ストレッチ、筋力トレーニング、バランス訓練などを行います。これらのトレーニングを継続することで、再発を防ぎ、膝の健康を維持できます。


予防と管理


膝の痛みを予防し管理するためには、次のポイントに注意することが重要です。


・適切な運動とストレッチ
適度な運動やストレッチは、膝の筋力や柔軟性を維持し、痛みの予防に役立ちます。特に、膝周りの筋肉を強化するエクササイズが効果的です。


・体重管理
過度の体重は膝に負担をかけるため、適切な体重を維持することが重要です。バランスの取れた食事と定期的な運動を心がけましょう。


・正しい姿勢と歩行法
正しい姿勢や歩行法を意識することで、膝への負担を軽減できます。特に、長時間の立ち仕事や歩行が多い場合は、姿勢に注意しましょう。


膝の痛みは、日常生活に大きな影響を与えます。
膝の健康を守るためにも、膝に負担をかけない生活習慣を心がけて予防に努めたいものです。
すでに痛みがある場合は、早期の診断と適切な治療が重要です。
膝の痛みを感じたら、当院にお気軽にご相談ください。